2014年04月27日

【ソルサク】創作文献『あらしのよるに』


『あらしのよるに』
ある土地に二つの国があった。

一つは鉄の国。
資源に恵まれないが、金属の加工技術に優れ、
優れた武器を用いて他国を侵略する国。

もう一つは森の国。
優れた兵力を持たないが、
豊富な資源による交易で財を成す国。

二国は、気高い山を挟むように存在したが、
その山の高さと、森の深さ故に、互いの存在を知らなかった。


その夜は、ひどい嵐だった。
狩りをしていた森の国の女は、洞窟で雨宿りをすることにした。

洞窟の中には先客がいた。
それは男だった。男は馴染みがない服を着ている。

話を聞くと、男が住む国は、
女が来た方角とは逆方向にあり、
鉄の国と呼ばれているらしい。
素材の採掘に来たところ、
急な嵐に遭い、この洞窟で落ち着くのを待っていたそうだ。

二人は、嵐が止むまでの間、互いの国のことを語り合った。
嵐が止んだ頃には、二人はすっかり仲良くなっていた。

二人は、別れる前に互いの国の品を交換することにした。
嵐の夜に偶然洞窟に居合わせ、
互いの国について語らいあった。
その記念として。

女は、黒い木の彫り物を男に渡した。
その木は、石のように頑丈で、
燃やせば、先が見えないほど黒い煙を出すという。

男は、白光りする金属の装飾を女に渡した。
その金属は軽くて柔らかく、
燃やせば、激しい光を出すという。

二人は、互いに礼を言いあうと、洞窟を後にした。


女は国に返ると、男に貰った装飾を大切にしまった。
仲間に自慢したい気持ちもあったが、
男から、柔らかい素材で出来ていると聞き、
丁重に扱うことにしたのだ。


しばらくして、
女は再び洞窟にやってきた。
特に用事があるわけではなかったが、
ふと、あの夜に合った男のことを思い出し、
会ってみたくなったのだ。

女が洞窟に入ると、驚いたことに、あの男がいた。
まさか、本当に会えるとは思わなかった。
女は装飾の礼を言おうとしたが、男の様子がおかしいことに気が付いた。
男は酷く慌てているようだった。

男の話はこうだ。
国に返った後、男は洞窟での出会いと彫り物を仲間に自慢した。
通りがかった学者から、男は彫り物の素材が大変貴重なものだと教えられた。
その話が、王の耳に届き、女の国に興味を持ったらしい。
王は調査隊に女の国の場所を調べさせ、近々侵略戦争をするらしい。
それを女に伝えたかったが、国の場所を知らないため、
再開できる可能性にかけて洞窟で待っていた。

男は顔を涙で溢れさせ、謝罪を繰り返した。
自分の軽率な行動が、君の国を危険にさらしてしまった。
どのような罰も受けるつもりだ、と。

女は男の涙を拭きながら言った。

あなたは悪くない。
私だって、珍しい品を貰えば自慢もする。
あなたの場合、それが運悪く戦争に発展しただけだ、と。

男は、感謝を述べると、
せめて君だけでも逃げて欲しいと言い残し、洞窟を飛び出した。


男は鉄の国に戻ると、王に戦争を取りやめてもらえるよう頼み込んだ。
しかし、王は頷かなかった。
それどころか、しつこく懇願する男を兵に捕らえさせ、
男を地下牢に閉じ込めてしまった。


女は急いで森の国に戻ると、鉄の国が仕掛ける戦争を長に知らせた。
しかし、長は動かなかった。
女が信用されていなかったわけではない。
ただ、山を越えた先に鉄の国があることを知らない長は、
その情報が嘘とも真実とも判断できなかったのだ。
長は、調査隊を出し、国が見つかれば信じるとだけ返した。

調べてからでは遅い。既に鉄の国は準備を始めている。
女は長を説得したが、それ以上は聞き入れてはもらえなかった。


鉄の国が攻める日は刻々と迫ってくる。

鉄の国の地下牢の中で、男は女の身を案じ続けた。
女は自分を許してくれたが、戦争が迫っていることに変わりはない。
このままでは、女の国は侵略されてしまうだろう。
どうすれば、戦争を止められるのだろうか、
男は何度繰り返したかわからない問いに悩み続ける。

ふと、男は地下牢の中が妙に明るいことに気が付いた。
窓から光が入っているにしては、明るすぎる。
その光は、その光が目の前に浮かぶ白い杯から発せられていた。

白い杯から声が聞こえる。
戦を止めたいと願うならば、代償を払え。


その頃、女は森の国の自宅で、男のことを考えていた。
男の話通りなら、あと数日中に鉄の国が攻めてくる。
資源ばかりで兵力に乏しい森の国は、簡単に侵略されるだろう。
どうすれば、森の国を守れるだろうか。

女が国を守る術に悩んでいると、目の前に白い杯が浮かんでいることに気が付いた。

杯から声が聞こえる。
国を守りたいと願うならば、代償を払え。


男が願いを口にした瞬間、男は意識を失い、男の口から煙のようなものが噴き出した。
それと同時に、女から貰った彫り物が黒い煙をだして燃え始めた。
煙のようなものは黒い煙を吸い込み、その色を黒く染めると、天に昇っていった。

女が願いを口にした瞬間、女は意識を失い、女の口から煙のようなものが噴き出した。
同時に、男から貰った白光りする装飾が激しい光を出しながら燃え始めた。
煙のようなものは光を吸い込み、光をまとい始めると、天に昇っていった。

黒い煙のようなものは、山を覆う闇となった。
闇はすべての光を遮り、山を越えようとする者の行き先を狂わせた。

光る煙のようなものは、山を覆う雷雲となった。
雷雲は嵐を呼び、山を越えようとする者の力を削いだ。

突然山を覆った嵐と闇に対し、鉄の国の王は酷く困惑した。
何度も兵を差し向けたが、
暗闇で道を見失い、
激しい嵐で動けず、とても森の国にたどり着ける状況ではなかった。
鉄の国の王は、森の国への戦争を諦めざるをえなくなった。

鉄の国が侵略を辞めても、
その山には嵐と闇が蔽い続けた。
まるで、鉄の国から森の国を守っているかのように、
そして、ある男女が洞窟で出会った嵐の夜を再現し続けるかのように。
【編集後記】
きっかけは、Twitterタイムライン。
ヤギ要素の代わりとして、自然を生かして生活する森の国、
オオカミ要素の代わりとして、資源を奪って生活する鉄の国(当初は火の国)
を考えた。

「嵐の夜の再現、嵐によって2国の争いを止める」というのは冒頭から考えていて、争いの切っ掛けを
各国の王子・姫の逃避行にしようかと考えたが、それでは出会いのきっかけが作れないので変更。

聖杯出現時に持ち合わせた物品が結果に反映されることがソルサクでは度々あったので、
出会いの記念品を反映させることにした。

ちなみに、
森の国の女が男に渡した彫り物の素材は黒炭。
鉄の国の男が女に渡した装飾の素材はアルミニウム。

雷雲にすることは決めていたものの、雷は鉄の国も森の国も扱わなそうなんで、稲光から燃焼光が激しいアルミを考えた。森の国の品が黒炭なのは、「鉄の国が欲しそうなもの=燃料」という発想。
実際に、王は燃料が欲しかったのか、貴重素材に興味が湧いたのかは未定。


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posted by 蒼井夜空 at 02:46| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月25日

【ソルサク】創作文献『虚飾で彩られたカラス』


『虚飾で彩られたカラス』(イソップ童話)

ある街に、黒髪の女がいた。
艶やかな髪を持った美しい女である。

女の母親は東の国の生まれである。
顔立ちも、母の国であれば、引く手数多であっただろう。

しかし、この街ではそのようにはならない。
原因は二つあった。

一つ目は、この街にあった。

この街に住む人間の髪は、みな輝く金色である。
その中に住む黒髪の女は、
珍しがられると同時に、奇妙も思われていた。

二つ目は、彼女自身にあった。
黒髪の女の顔立ちは悪くない。
街の者たちとは毛色が異なるが、それでも美しい顔立ちである。
しかし、髪色で嫌厭されてきた過去が、
彼女の表情を暗くさせ、見た者の印象を悪くさせていた。

街では、定期的に美しさを競う祭りが行われる。
対象は、
衣装であったり、
装飾品であったり、
美貌であったりと様々である。


その日は、美しい衣装を競う祭りであった。
黒髪の女は、家の窓から祭りを眺める。
彼女は、衣装を揃えられるほど裕福ではなかった。

壇上に、美しい衣装を着た女性が立っている。
黒髪の女は、檀上の女が羨ましかった。
美しい衣装を着ていることに。

すると、部屋の中に、白く輝く杯があらわれた。
黒髪の女が驚いて杯を見ると、声が聞こえた。
「願いを叶えたければ、代償を払え」

黒髪の女は戸惑った。
なぜこのような事態になっているかはわからないが、
少なくとも、自分は支払える財産がない。
代償に値するとしても、母譲りの黒髪は捧げたくない。
もちろん、命を捧げるなど、もってのほかだ。
女は試しに、
それ以外の代償で叶うのであれば、叶えてほしいと願った。

すると、白い盃は姿を消し、
杯があった場所には、黒髪の女が憧れていた衣装があった。

黒髪の女は、喜んだが、とたんに冷静になった。
いくら衣装が美しかろうと、
醜い自分が来ては、意味が無い。
彼女は肩を落として、美しい衣装を仕舞った。


その日は、美しい帽子を競う祭りだった。
黒髪の女は、窓から祭りを眺めている。

帽子を被る彼女が羨ましい。
あの帽子があれば、自分も彼女のように
美しくなれるかもしれない。

黒髪の女がそう考えていると、またもや白い盃が現れた。
再びの遭遇に、女は驚かなかった。
それどころか、すぐに杯に願いを言った。
たちまち、白い盃は消え、後には美しい帽子が残った。

その後も黒髪の女は白い杯に願い続けた。
美しい靴。
美しい宝石。
美しい耳飾り。
美しい肌着。
美しい品が披露され、
それで着飾る彼女たちを見るたびに、
片っ端から欲していった。


ある日、街に一人の記者が現れた。
記者は、東の国の生まれであった。

美しさを競う街があるとの噂を聞き、
取材にきたのである。

記者が街を歩いていると、美しい後ろ姿が見えた。
身を包む、美しい品々にも驚いたが、
なによりも目を惹いたのは、その髪である。

金色の髪を持つ国民とは明らかに違う黒髪。
それは記者の国に見られる色であったが、
鳥の羽にも例えられるその艶は、記者が見たこともないほどであった。

「おそらく、相当の美女に違いない」
記者はそう思い、黒髪の女に声をかけたが、
黒髪の女は俯いたまま、記者を見ようとしない。

どうにかして、彼女の顔を見たい記者は、
手当たり次第に彼女を褒め始める。

服を褒め、帽子を褒め、宝石を褒めた。
それでも、着飾る品々だけが美しいことを理解している
彼女は、うつむいたままだった。

しかし、記者が髪を褒めたことで態度を改めた。
その黒髪は、彼女自身のものである。

借り物の衣装ではなく、
自身を褒められたことで、黒髪の女は試してみたくなった。
この記者ならば、自分自身の美しさを見てくれるかもしれない。

そう思うと、黒髪の女は記者に顔を見せた。
すると突然、記者の顔は恐怖に染まり、黒髪の女から逃げ出した。

黒髪の女は気づかなかった。
彼女の顔は、化物の顔になっていたのである。

美しい品々を得るために彼女が捧げ続けた、
命でも、髪でもないもの。
それは、彼女が最後まで気づかなかった、
彼女自身の美貌であった。
【編集後記】
Kuro_OwO_Nekoさんのイラストで、「ギャルのパンティを願う書き手」を見たのがきっかけ。「ギャルのパンティを願いそうな魔物」ということで、服飾系を考えた。

なぜ、元となった人物が黒髪なのかというと、「鴉の濡れ羽色」という黒色の表現から来ている。綺麗な黒色を示す表現なので、彼女は美しい黒髪(おそらくロング)にした。
改めてみると、「美に執着する怪物女」というあたりが口裂け女テイスト。ポマード、ポマード。

外見のイメージは、鳥顔、黒髪の女性。ワルキューレ風でもいいが、シンデレラの例があるので、豪華な衣装を身に着けた新骨格としてもいいかも。
にしても、美しい衣装を着て、鳥顔の黒髪ってホントにバケモノだな。文献イラストを見るとトト神と間違えそう。

供物を獲得できるとすれば、
追尾弾:「黒鴉女の頭髪」
投擲弾:「黒鴉女の装飾」


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posted by 蒼井夜空 at 01:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月22日

【ソルサク】創作文献『ある魔法使い』

『ある魔法使い』

その者は魔法使いだった。
しかし、あまりにも謎が多い魔法使いだった。
性別は知られず、
名も知られず、
所属さえも定かではない。
ただ確かなのは、その魔法使いは、
物を語る本を携え、常に何かを求めていたことだ。

ある時は、力を求めた。
全ての魔物を駆逐するべく、より優れた魔法を求めた。

ある時は、衣服を求めた。
自らを飾りたてるために、より多くの衣服を求めた。

ある時は、格を求めた。
優れた存在と評されるために、より強き魔物を殺した。

ある時は、魂を求めた。
魔物の殺害が目的ではなく、魔物の魂そのものを求めた。

ある時は、気を求めた。
魔物の救済が目的ではなく、魔物の気そのものを求めた。


魔物を憎む魔法使いは、魔物を生贄に捧げ続ける。
魔物を憐れむ魔法使いは、魔物を救済し続ける。
しかし、この魔法使いは、魔物に対し、何も感じてはいない。
ただ、"何か"を求めているのだ。

故に、求める"何か"を得るためであれば
魔物を救い、魔物を屠り、
友を癒し、友を殺し、
自らを守り、自らを捧げ、
時には、神さえも手にかける。

求める物がある限り、その魔法使いは代償を払い続ける。
ある意味、その姿は最も魔法使いらしいのかもしれない。

その魔法使いは、求める物のために戦い続ける。
今までも、これからも。

彼の者の物語が続く限り。
【編集後記】
気まぐれに書いた一本。「もしプレイヤーが魔物化したら」という展開で始めたが、結局魔物になり損ねた。
もし魔物化することがあれば、間違いなく「強欲」


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posted by 蒼井夜空 at 01:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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