2014年06月21日

【ソルサク』創作文献『大きな古時計』

Twitterで募集したお題を元に作成しました。
お題依頼をした人は、感想コメントを残してもらえると嬉しいです。



『大きな古時計』

ある山村に、一人の男がいた。
男はウサギ商だった。

男にとって財産はふたつ。
ひとつは、男の商品であるウサギたち。
もうひとつは、大時計だ。

この大時計は、男が祖父から譲り受けた、唯一の形見である。
時折、故障して止まってしまうことがあるものの、
その都度修理し、大切に使い続けていた。

ある日、男のもとへ依頼が届いた。
ある貴族が旅行にで居る間、ウサギを預かってほしいそうだ。

そのウサギはとても珍しいウサギで、飼育がとても難しいという。
この依頼は、ウサギ商である男の腕を見込んでとのことだった。

男は依頼を引き受けると、飼育する上での注意を聞いた。
驚いたことに、このウサギは餌を与える時間が一度でも狂うと、
体を壊してしまうそうだ。

男は注意深く、貴族のウサギの世話をした。
貴族が指定した時間に餌をやり、
貴族が指定した時間に散歩をさせた。
指定の時間が近くなると、
時間になるまで大時計の前で待つこともあった。

ある朝、男は寝坊をした。

原因の一つは大時計が止まってしまい、音が鳴らなかったことだ。
しかし、それだけならば、さほど問題ではない

大時計が止まること自体はそこまで珍しくないし。
普段の男ならば、時計が無くとも時間通りに起床していた。

しかし、最近は貴族のウサギを世話するために疲労が溜まり、
その上で大時計が鳴らなかったために、寝坊したのだった。

男は大急ぎで貴族のウサギの様子を見に行ったが、
残念ながら貴族のウサギは死んでいた。


怒り狂う貴族に、男は謝り続けたが、貴族の怒りは収まらなかった。
なんと、貴族は男を処刑するようにと部下に言い放ったのである。

男は必死になって逃げ、どうにか追っ手を撒くことに成功した。
しかし、男の不幸はそれだけに留まらなかった。

疲れ切った体で我が家に戻った男が見たものは、
ウサギの死体であった。

貴族の報復だろう。ウサギは皆、深い傷を負って息絶えていた。

男にとって、ウサギたちは商品であると同時に、大切な家族だった。
多くの家族を一度に失った悲しみに、男は泣き崩れた。

どうしてこうなってしまったのだろう。
時計さえ壊れていなければよかったのだ
時計の故障に気付いていればよかったのだ。
そもそも、貴族の依頼を受けなければ。
許されるなら、あの日を初めからやり直したい。

すると、不思議な幻覚が見え始めた。

それは、光り輝く杯である。
盃から声が聞こえた。

願いを叶えたくば、代償を払え。

願いを叶えるという言葉を聞き、男は頷いた。

気が付くと、男は大時計の前にいた。
祖父の大時計は、今も時を刻んでいる。
時間は、貴族のウサギに餌を与えるべき時間の
少し前といったところか。

すると、男の目の前で、時計が止まった。
その時間は、貴族のウサギに餌を与えるべき時間の直前。

男は、急いで貴族のウサギの様子を見に行った。
驚いたことに、貴族のウサギは生きていた。

とりあえず、貴族のウサギに餌を与えると、
男は状況を見直すことにした。

自分は確かに、貴族のウサギを殺してしまったはずだ。
原因は、祖父の大時計が止まり、
餌を与えるべき時間に起きていなかったからだ。
そして、貴族の怒りを買った挙句、自分のウサギを殺された。

しかし、今はどうだ。
貴族のウサギは生きていた。
大時計が、自分の目の前で、"ウサギが死ぬ前に"止まるのを見た。
当然ながら、他のウサギたちにも問題は無い。

もしかして、時計が止まる直前の時間に戻るのだろうか。

男はひとつ確かめてみることにした。
男は大時計を留め、しばらく待ち、「時間を戻したい」と願った。
すると、大時計が光出して世界を覆う。
光が収まって見えたのは、
留める直前の時刻を示す、動いている大時計だった。

男の推測は当たっていたのである。

この力を有効に使う手は無いか。
そう思った男が考え出したのは賭け事だった。

男は朝起きるとウサギの世話をし、時計を留めると、
賭けをしに出かけるようになったのだ。

賭けに没頭したせいで、ウサギが死んだ日は、
時間を戻してほどほどの勝負で切り上げた。
気に入らない負け方をした日は、
時間を戻して勝負をやり直した。
賭けの末に喧嘩となった日は、
時間を戻して別の相手と勝負をいした。

ウサギ商という仕事の他に賭け事を覚えた男は、
その後も度々、貴族のウサギを死なせたが、
それでも時間遡行のおかげで仕切り直し、
ついには、貴族の依頼を終えることができた。

貴族のウサギという、一番の懸案事項が解決し、
肩の荷が下りた男は時間遡行を楽しもうと考えたが、
残念ながら、そううまく行かなかった。
何度も時間を戻したせいで、時間遡行に綻びが出始めたのである。

賭けに大敗した日に遡行すると、
賭けを始める前より持ち金が減っていた。

大怪我を負った日に遡行すると、
軽いながらも怪我が残ったままだった。

ウサギがキツネに襲われた日に遡行すると、
襲われる前から数が減っていた。

そしてついには、時間遡行そのものができなくなった。
止まる直前まで遡行を可能とする大時計。それが、完全に動かなくなったのだ。
いくら修理しても動かず、大時計が完全に動かなくなってからは
いくら願っても時間が戻ることはなかった。

男は、ひどく落胆しながらも、以前の生活に戻った。

ある激しい雨の夜。
男は村から離れた街にいた。

本来、ウサギの世話がある彼があまり遠出することは無いのだが、
この日は買い手からの要望もあり、しぶしぶ町へ足を運んだのだ。

男は窓の外を眺めながら、ウサギを心配した。
ウサギの世話は信頼できる者に頼んであり、
男のウサギは、手が掛からないように育てているため、心配はない。

そのはずなのだが、激しい雨を見ていると、
男の胸には言いようのない不安が募った。


翌朝、大急ぎで村に戻った男が高台から見たものは、水に沈んだ村だった。
川が氾濫したのだろう。家々は水に沈み、誰の物かも知れない家財が流れていた。

男が茫然としていると、一人の女が話しかけてきた。
その女は、旅人らしい。

話によると、彼女は昨晩からこの高台にいて、村が沈む瞬間を目撃したらしい。

山のほうから大量の水が押し寄せてきて、
村が沈むまではあっという間だったそうだ。
幸い、彼女は高台で休んでいたから助かったが、
村人は逃げる暇も無かったらしい。
そして、水が押し寄せたのは、
奇しくも男がウサギの安否を心配していた頃だった。

その話を聞き、男は崩れ落ちた。

氾濫することを知っていればウサギを残していかなかった。
村人に危険を知らせることだってできたはずだ。
それどころか、氾濫に対策をすることだってできた。
出来れば今すぐにでも時間を戻したかった。

しかし、時間遡行はできない。
男が乱用したせいで、使えなくなっているのだ。

こんなことになるならば、使用を控えるべきだった。
せめて、本当に変えたい事実を変える時に留めるべきだった。

男が後悔し、絶望していると幻覚が見え始めた。
あの時に見えた、白い杯である。

白い杯が、あの日に聞こえた声で語り掛けてきた。

願いを叶えたくば、代償を払え。

その声に対し、男は願った。
どんな代償を捧げても構わない。
川が氾濫する前に、このことをみんなに伝えたい。

すると、村の一角が光りだした。
そこは、男の家がある場所。
正確には、祖父の大時計がある場所だった。
その光は、村を包んでもなお収まらず、
男以外を光の世界に包み込んだ。


光が収まってしばらくの時が立ち、
その高台に一人の女がやってきた。
女は旅人である。

女が高台から村を見下ろすと、
川の周りが村の男たちが集まっていた。
どうやら、川岸に積み重ねた土嚢を処分しているらしい。
あの様子だと、昨晩の大雨でも大事はなかったようだ。

今夜はこの村の世話になろうか。

そうつぶやき、村へと降りて行った彼女を、
時計とウサギが混じり合った魔物が眺めていた。
【編集後記】
Twitterでのリクエストに答えました。
今回の文献には、以前から考えていた「時計ウサギ」の要素が入っています。当初は、「特定の時間を再現した並行世界へ飛ぶ」というシナリオを考えたのですが、結局こんな構成になりました。

「祖父の時計」…大きな古時計そのまま。「今はもう動かない」から、文献の途中で完全に壊れることは事前に決めていました。
「貴族のウサギ」…ウサギ商の男に、最初に「やり直したい」と思わせるために用意した、デリケート過ぎるウサギ。逆に、男のウサギは「手が掛からないウサギ」。私なら、どれだけ前者が珍しかろうと、飼うなら後者を選びます。
「賭け事」…「もしも時間を巻き戻せるなら」で、一番実用的なのはこのあたりだと思う。話の都合とはいえ、そのままギャンブラーにならず、すっぱりと諦めた男は尊敬に値すると思う。
「沈んだ村」…元となった光景は、雛○沢だったり、キ○の旅に登場する国だったり。男の村人に対する感情が描写されていないので、「村を戻したい」という動機で考えると強引な展開。
「時計とウサギが混じり合った魔物」…あの魔物はいったい。

魔物のカテゴリは「生欲」。

魔物としては、ウサギ耳の中年男とか、ハーメルン的なウサギ男とか。たぶんウサギを召喚する。
固有の能力として、危険を感じると短時間の時間遡行を行う。
例えば呪部破壊をすると、大時計を召喚して飛び込んで姿を消し、どこからともなく現れる。再度現れたとき、呪部は修復され、体力も多少回復しているが、遡行をするたびに呪部は脆くなり、回復量も減っていく。何度か遡行させると、遡行そのものができなくなる。

なかなか死んでくれないあたりは、フェニックスを彷彿とさせる。

供物を獲得できるとすれば、
結界:「時兎の長針」
複製:「時兎の長耳」ランダムに1個の供物の回数を回復する


>>本棚に戻る
posted by 蒼井夜空 at 00:43| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月15日

【ソルサク】創作文献:本棚

ソルサクの創作文献が増えて管理が面倒になったので、 本棚として、ここにまとめます。
カテゴリ名称リンク
魔物かぐや姫リンク
魔物およげ!たいやきくんリンク
魔物もりのくまさんリンク
魔物ももたろうリンク
魔物アリとキリギリスリンク
魔法使いある魔法使いリンク
魔物虚飾で彩られたカラスリンク
魔物星の王子様リンク
魔物大きな古時計リンク
魔物天の川リンク
魔物あつおリンク
舞台あらしのよるにリンク
舞台星の王子様(土地)リンク

以下、不定期に作ったソルサク箱ドットのペーパークラフトを並べます。
パーシヴァル.jpg
パーシヴァル(Percival.pdf)

箱ドットの作り方(かなりざっくりした説明です。わかりにくくてごめんなさい。)
[1]*.pdfのファイルをDLします。
[2]プリンタで印刷します。用紙サイズはA4くらいがちょうどいいかも。
[3]外形に沿って切り抜きます。身体の底にある白部分は、パーツを張り付ける時に指を入れるための穴なので、適度な穴をあけてください。
(以下、便宜上[4]-[8]とつけていますが、組みあがればどの順でもOKです)
[4]頭は直方体になるように、体は台形になるように折り目を付けます。
[5]「のり」部分に接着剤を付けて、頭と体を立体にします。(底以外を貼って箱を作り、最後に蓋を閉めるように貼ると貼りやすいかも)
[6]両腕の破線を山折りにし、「のり」部分に接着剤を付けて身体に接着します。
[7]両足の破線に折り目をつけ、「のり」部分に接着剤を付けて身体に接着します。山か谷かは、足の裏を見せるか、甲を見せるかで選んでください。写真に乗せているのは、破線を山折りにし、身体底の「のり」に接着しています。
[8]首に当たる部分に接着剤を付け、頭と身体を接着します。身体の中には指が入りますが、頭の中は空洞なので、少々難しいかも
[9]完成。
posted by 蒼井夜空 at 08:51| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【ソルサク』創作文献『星の王子様』

Twitterで募集したお題を元に作成しました。
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『星の王子様』

ある国に、変人で有名な王子がいた。
王子は、薔薇を執拗なまでに愛していた。

その薔薇は、城の裏に一輪だけ生えた薔薇で、
王子が散歩中に偶然見つけたものだという。

王子は一人で薔薇の世話をしていた。
水も、肥料も、虫よけも。
それどころか、配下には一切近寄らせず、
薔薇の周囲を耕すと、
その土地に入ることを禁じた。

王子の配下は、その様子を
「まるで女に恋をしているかのようだ」と語った。

王子の世話は、適格であったが、
一方で過保護だった。
虫がついていないかと警戒する日もあれば、
土の渇き具合を熱心に調べる日もあった。
そして薔薇は、王子の世話に答えるように、
美しい姿で居続けた。

しかし、それも終わる時がきた。
薔薇の寿命である。

最愛の薔薇が枯れるという事態に王子は慌てふためき、
城の配下たちに泣きついた。
しかし、寿命で枯れる薔薇に、
配下ができることはなにも無い

絶望に打ちひしがれた王子は、不思議な光景を見た。
それは、白く輝く盃である。

「願いを叶えたくば代償を払え」
王子は、突如聞こえた声に戸惑いつつも、
藁にもすがる思いで叫んだ。
「誰でもいい、何でもする。彼女を助けてくれ」

気が付くと、白い杯は消えていた。
そして、王子は薔薇から声が聞こえることに気付いた。
その声に耳を傾けると、
「血を捧げなさい」
それは、女の声だった。

王子は戸惑いつつも、自らの腕を切り付け、
枯れかけた薔薇に血をかけた。
すると、枯れかけた薔薇はみるみる美しさを取り戻した。

王子は歓喜した。
「この声は、薔薇の声だ。彼女の声が聞こえるようになったのだ」

以来、王子はそれまで以上に薔薇の世話をするようになった。

「風よけを立てなさい」
「水をかけなさい」
「虫よけを作りなさい」
薔薇の美しさを保つために聞こえる女の声。
王子はそれを、薔薇の声と信じ、従い続けた。

女の声は、時折奇妙なものを求めた始めた。
「猛獣の肉を捧げなさい」
植物らしくない要求だが、血をかけた時は枯れる寸前だった。
答えずに枯れてはたまらないと、王子は猛獣の肉を捧げた。

奇妙なことはそれだけではない。
女の声が求めたものを王子が薔薇の傍に置く。
すると、翌朝には土山に埋まっているのだ。
初めは配下が手を加えたのかと考えたが、
そうではないらしい。
そして、その土山は日をが立つほどにみるみる縮んで行くのである。
土山がある間、女の声は無かった。


ある日、薔薇が今までにない要求をしてきた。
「星を取ってきなさい」

さすがの王子も困り果てた。

星とは、夜空に輝く星々だ。それは理解できる。
しかし、それを持ってくる手段など、見当もつかない。

しかし、星を取ってこなければ、今度こそ薔薇が枯れるかもしない。
王子は、国中に呼びかけ、星を取ってくる方法を考えさせた。

偉ぶる貴族に尋ね、
計算ばかりしている資産家に尋ね、
知識を誇る学者に尋ねた。
しかし、誰も星を取る手段を見つけることはできなかった。

薔薇が枯れる恐怖の中で、王子は再び白い杯の幻覚を見た。
王子は白い杯に向かって叫んだ。
「なんでもいい。星を取っ手くる方法を教えてくれ」

すると、王子の前に金に光る蛇が現れ、どこからともなく声が聞こえた。
今度は男の声だった。
「この蛇に噛まれれば、お前を星に届けよう。」
王子は喜び勇み、光る蛇に腕を差し出した。

蛇に噛まれた王子はその場に倒れた。
すると、王子の身体から、
透明な姿の王子が飛び出し、天高く昇って行った。
そして王子だった肉体は、翌朝には土山に埋まった。

王子が星を手に入れたのか、知る者はいない。
しかし、今でも時折、
薔薇の周囲には新たな土山ができては消えるのだった。
まるで、姿を消した王子が、薔薇に供物をささげたかのように。

<以下、土地文献としての追記。>
王子が立ち入りを禁じた土地。
そこに踏み込みこんだ者は土に飲まれ、新たな土山となった。
そのため、王子の消失に配下が気づいても、
薔薇の土地はそのままになった。

国が亡び、人が立ち寄らなくなっても、
薔薇の周囲には土山ができ、消えていく。
【編集後記】
Twitterでのリクエストに答えました。
原作を読んだけど、ソルサクには星間移動の概念が無いから、どうしても星要素が少ないのが残念。
原作からの要素は
「王子」…いわずもがな、タイトルから。しかし、こじつけと言えばこじつけ。
「一輪の薔薇」…そのままといえばそのまま。王子が周囲を耕して立ち入りを禁じたのは、原作の「家一軒程度しかない星」から
「猛獣の肉」…原作のトラから。ソルサク界に獅子はいるが、虎の存在は不明。
「星を目指す」…最終的に星を持って来させることは決めてました。
「土山」…薔薇の周りの土山が、像を丸のみしたボアのイメージ。

魔物のカテゴリは、薔薇基準に『暴食』か、王子基準で「色欲」か。

魔物としては、「リヴァイアサン」のような土地一体型の魔物。
外見のイメージは、頭頂部に薔薇が生えた土山のゴーレムとか、いいかもしれない。
一方で、ゴーレムから距離を取ると、ゴーストが引っこんで透明な王子が奇襲を仕掛ける二段構え。その間、薔薇の周囲は土山(破壊可能)で囲われている。とか
凶呪部に「薔薇」がありそうだけど、もしも破壊されたら、きっと怒り狂うだろう。

供物を獲得できるとすれば、
爆弾:「唯薔薇の花弁」
???:「金蛇の牙」


>>本棚に戻る
posted by 蒼井夜空 at 08:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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