2014年07月05日

【ソルサク』創作文献『天の川』

Twitterで募集したお題を元に作成しました。
お題依頼をした人は、感想コメントを残してもらえると嬉しいです。


『天の川』
ある国に一人の王子がいた。

王子には酷い病を抱えていた。
それは恋の病である。

王子は河を越えた先にある隣国の姫に恋をしていたのだ。
王子は、隙あれば城を抜け出し、橋を渡って姫の様子を見に行った。

王や城の家臣、番兵の目を盗み、隣国の衛兵の監視を掻い潜って敷地に入り込み、
しばらく遠目に姫を眺めると、満足して帰ってくるのだ。

幸い、王子はいつも夜遅くに、怪我なく帰還するため、
王や家臣たちも多少は大目に見ていた。

しかし、そうは言ってられない事態が発生した。
隣国が他国との戦争を開始したのである。

河の存在により、幸いにも自国に攻め入られる心配は少なかった。
しかし、安全のためにも王子の出張は控えさせるしかない。
王は河に番兵を配し、王子だけは絶対に通らせないようにと厳命した。

王から、外出禁止を命じられた王は戸惑った。
いつも通り城を抜け出したものの、
いくら試みても河を渡ることは叶わなかった。

その夜、酷く落胆して帰還した王子が見たのは奇妙な幻覚だった。

白く光る杯である。そして、次のような言葉を発した。
「代償を払え、そうすれば願いは叶う」

その言葉に対し、王子は即答した。
「なんでもいい。彼女の下にいけるのならば、叶えてくれ」

気が付くと、あれだけ光っていた杯の姿は消えていた。
代わりに、王子の背中には、いつぞやの夜に見かけた動物の羽…。
王子は名前を知らなかったが、蝙蝠の羽が生えていた。

王子は悦び、蝙蝠の羽を使って闇夜を飛んで行った。

翌朝、城の前で深手を負った王子が見つかった。
河を越えた王子は、隣国の兵に発見され、
不審者として襲撃されたのである。

王は蝙蝠の羽に気付かなかったが、
王子が外出癖が原因で負傷したことは察しがついた。

王は、王子が危険な隣国へ出向かないようにするため、
そして、誰とも知らぬ襲撃者から王子を護るために、
王子を監禁することに決めた。

王子を自身の部屋に閉じ込め、扉には番兵を付けた。
窓から出られることが無いように、鉄格子を付けた。
誰が見ても、王子の脱出は不可能だろう。

しかし、王子は諦めなかった。

時には番兵の隙を突き、
時には食事を持ってきた給仕を殴り倒して、
時には死を演じて、心配して駆けつけた家臣の傍らをすり抜けて
扉からの脱出を試みた。

しかし、その都度王子は押さえつけられ、部屋に戻された。
今や、多少騒いだところでは誰も反応してもらえない。

ある夜、王子が部屋で途方に暮れていると、
番兵の話し声が聞こえてきた。

「戦争は、隣国の負けで終わりそうだな」
「らしいな。戦争に負けたら、あの姫様はどうなるんだろうな」
「綺麗な姫様だからな、相手の国に取られちまうだろうさ」

それを聞いた王子は、何としてでもここを出ねばと、
力いっぱい、戸を殴りつけた。
しかし、それは番兵は驚かせこそしたものの、
状況の打開には至らなかった。

次に王子は、窓の鉄格子にしがみついた。
しかし、いくら力を込めようとも、鉄格子はびくともしない。
隙間から、どうにか出られないかと身体をねじ込むも、
頭を通すので精いっぱいだった。

あの夜に得た羽は、こんな事態になんの役にも立たない。
王子は、無力感と絶望に打ちひしがれた。

すると、王子の目の前には、あの夜にみた杯が浮かんで見えた。
「願いを叶えたく場、更なる代償を捧げよ。」
その言葉を聞いた王子の目つきが変わった。

王子は、壁に固定された装飾用の斧に目を付けた。
重すぎて、一人では持ち上がらないほどの斧だったが、なんとか引きずりおろす。

そして、王子は斧の刃に向けて、力の限り腕を振り下ろした。
想像を絶するほどの激痛と共に、王子の手首が落ちる。

しかし、王子は怯むことなく、さらに腕を、体を打ち付ける。
その都度飛び散る肉片は、それぞれが小さな蝙蝠となり、
鉄格子をすり抜けると城の外へと飛び立っていった。

次第に、肉片だけでなく王子の身体からも少しずつ蝙蝠が飛び立ち、窓を抜ける。
ついには、王子の前進が、蝙蝠の群れとして、鉄格子を潜り抜けた。

蝙蝠の群れとなった"王子"は、各々が赤く目を輝かせ、隣国へと向かった。
膨大な数の蝙蝠が群れが、天を泳ぐ大蛇のごとく、細く長く天を伸びていく。
夜空に輝く蝙蝠達の赤い眼光は、天に赤く光る河を描いていた。

その後、王子の姿を見た者はいない。
【編集後記】
Twitterでの「天の川」というリクエストに答えました。
天の川にカオス成分を組み込むため、目が光る蝙蝠の集団とすることは決めていましたが、蝙蝠の群れになる存在の設定に苦戦しました。

「河」…天の川ベースなので、男女の間に河を配置しました。最後に、天の川となった存在の対比になるかもと狙ってもいます。
「王子の外出癖」…端的に言えば、ストーカーです。王子が異常なまでに姫に会いたがる御ぜん立てとして配置しました。王子に対して姫が何を思っているか、そもそも存在に気付いているかは秘密。
「蝙蝠の羽」…最近よく使う、二段聖杯の一回目。とりあえず、変身の第一段階です。王子が監禁されるには、外出を咎められるかなにかの理由が必要と思いました。
「自室への監禁」…「愛する人に会うために自身を切り刻む」というコンセプトから始まり、最初に浮かんだのが某"魔女のゲーム"なので、脱出不可能な空間から出るために、穴を通れるように自身を刻む切っ掛けとしました。
「持てないほど重い斧」…一番悩み、未だに辻褄合わせができていないところ。原作ではニッパだが、腕を落とすほど景気よく行かないとカオス度が足りなそうに感じ、普通の斧では「それで鉄格子壊せばいいじゃん」になるので、設定を追加した。部屋に常備してもおかしくない理由に「装飾」と置いたが、なぜか刃挽きされていない不思議。

魔物のカテゴリは「色欲」。悪人に幽閉された男が愛する女性のために繰り広げる脱出劇のほうが爽快かもしれませんけど、ストーカーで、狂気の自傷をしている方がカオス度は高いのでしょうね。

魔物としては、ワイバーンと被るけど蝙蝠男が妥当かも。ただし、ワイバーンが格闘術や隠密に長けるのに対し、こちらは体の一部や全身を蝙蝠の集団に姿を変えます。ベルゼバブのイメージに近くなるのかな?
ある程度ダメージを与えると、ウロボロスのように天を舞い、空から黒い奔流が魔法使いを襲います。
蝙蝠達は王子が呼んでいるのではなく、あくまで体の一部が姿を変えた状態なので、呪部破壊で蝙蝠の総数は減少します。

供物を獲得できるとすれば、
投擲弾:「蝙蝠王子の手首」
土拳:「蝙蝠王子の足」


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posted by 蒼井夜空 at 06:46| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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