2014年10月25日

【ソルサク』創作文献『温泉魔物あつお』

即興にも程があるので低クオリティですけど、
感想コメントを残してもらえると嬉しいです。


『温泉魔物あつお』
ある泉の傍に、一人の男が倒れていた。
男はある組織に属していたのだが、
ここまで遠征に来たところを野盗に襲われたのだ。

傷を負いながらも、
どうにか逃げ果せた男の目の前に広がる泉。
この泉が、どうも奇妙なのである。
泉が熱を持っていたのだ。

熱を持つ泉など聞いたことが無い。
男は好奇心から腕を沈めてみた。
かなり熱いが、火傷するほどではないようだ。

不思議な泉もあるものだ。
男が驚いていると、違和感に気付いた。
腕の傷が癒えている。

どうやら、この熱い泉には傷を癒す効果があるようだ。
男は熱い泉に全身で浸かることにした。
結果は、腕を沈めた比ではなかった。
全てが満ち足りた感覚。
あまりの幸福感に、男は時を忘れた。
泉は男の身体の癒すだけでなく、男の心をも癒すのだった。


傷が癒えた男は、今後について考え始めた。
今から組織の下に戻ることはできる。
しかし、この不思議な泉と別れるのも惜しい。
男は熱い泉の傍で暮らすことにした。

幸いにも、生活に必要なものは泉の傍に揃っていた。
食料は、主に泉の傍に生える木の果実だ。
独特の酸味を持つが、毒は無い。
衣服や生活に必要な道具は、近隣の動物を狩った。
多少の負傷は泉で癒せるのも幸いだ。

思い付きで始めた時給持続。
当然ながら、楽ばかりではない。
男が生活に不自由しようが、
それを助ける者はいない。
それでも、熱い泉に浸れる男は幸せだった。

しかし、男の生活は長くは続かなかった。
突然、熱い泉が枯れ始めたのだ。

男は焦った。
泉から流れ出す川をせき止める。
しかし、泉が減りは止まらない。
泉が湧き出す湯を掘り返した。
しかし、泉が増える様子はない。

男は熱い泉に焦がれ、全てを投げ出してこの場に残った。
その泉が失われてしまえば、男には何も残っていない。
泉は完全に枯れ、男は絶望した。

その時、男は不思議な光景を見た。
白く光る杯が男の目の前に現れたのだ。

戸惑う男に杯が語り掛けた。
「代償を捧げれば、望みを叶えよう」

男は傍に生える木の枝を折ると、自身の胸に突き刺した。
「この命を捧げよう。代わりにあの泉を蘇らせろ」

その行動は、蘇らせる泉の治癒を当てにしてのものか
この機を逃すまいと自棄になった行動かはわからない。
少なくとも、男は必死だった。

白い杯の幻覚が消え、重傷を負った男が残された。
男の胸からはとめどなく血が溢れだす。

溢れだした血は、枯れた泉に溜まり始めた。
その量はとても男の身に収まるとは思えない。
男の肉体が血に沈んでもなお、男の胸殻は血が湧きだし続けた。

次第に男は意識を失い、
血を流し続ける肉体からは熱が失われていく。
対象的に、溜まっていく血には熱が満ちていった。

気が付くと、男は泉の傍らにたたずんでいた
男の目の前では熱い血の泉が湧き出し続ける。

形は違えど、男の願い通りに熱い泉は蘇った。
戸惑いつつも、男は泉の血を手に取ってみた。

しかし、血が男の手に収まることは無い。
それどころか、男の手は泉の熱を感じ取れなかった。

男は気づいた。
男が捧げた代償は、
男の命ではなく
熱い泉に浸る肉体であったのだということに。td>
【編集後記】
ソルサク会議室最終回。熱海温泉の「あつお」が魔物としてネタにされていたので執筆開始。おおよそ2時間程度で完成。
あつお君について全然知らないので、公式サイトの紹介を読みながらの作成。

「負傷した男」…温泉と言えば、治癒の効能かなと。遠征も社員旅行とかけています。
「熱い泉」…温泉
「酸味ある果実」…梅の実です。梅干しじゃなくても、少し酸っぱい。
「あふれ出す血」…モチーフはドワーフの酒。あつお君のサイズが分らなかったけど、もし小さいなら萎ませるつもりだった。
「捧げた肉体」…モチーフはゴースト。肉体を失い、魂だけになった男は何にも触れられなくなってしまった。

魔物のカテゴリは「強欲」。

魔物としては、ゴーストのように透明な本体と泉の中の肉体に分かれているタイプ。星の王子様同様、透明な本体の俳諧と、肉体に憑依して血の泉を操って暴れるのと2タイプで活動すると思う。元の泉が治癒の効果を持つから、ミノタウロス並みにしぶといかも。即興なので、これ以上は考えていない。

供物を獲得できるとすれば、
範囲回復:「治癒泉の血水」
近接武器:「治癒泉の樹枝」


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2014年07月05日

【ソルサク』創作文献『天の川』

Twitterで募集したお題を元に作成しました。
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『天の川』
ある国に一人の王子がいた。

王子には酷い病を抱えていた。
それは恋の病である。

王子は河を越えた先にある隣国の姫に恋をしていたのだ。
王子は、隙あれば城を抜け出し、橋を渡って姫の様子を見に行った。

王や城の家臣、番兵の目を盗み、隣国の衛兵の監視を掻い潜って敷地に入り込み、
しばらく遠目に姫を眺めると、満足して帰ってくるのだ。

幸い、王子はいつも夜遅くに、怪我なく帰還するため、
王や家臣たちも多少は大目に見ていた。

しかし、そうは言ってられない事態が発生した。
隣国が他国との戦争を開始したのである。

河の存在により、幸いにも自国に攻め入られる心配は少なかった。
しかし、安全のためにも王子の出張は控えさせるしかない。
王は河に番兵を配し、王子だけは絶対に通らせないようにと厳命した。

王から、外出禁止を命じられた王は戸惑った。
いつも通り城を抜け出したものの、
いくら試みても河を渡ることは叶わなかった。

その夜、酷く落胆して帰還した王子が見たのは奇妙な幻覚だった。

白く光る杯である。そして、次のような言葉を発した。
「代償を払え、そうすれば願いは叶う」

その言葉に対し、王子は即答した。
「なんでもいい。彼女の下にいけるのならば、叶えてくれ」

気が付くと、あれだけ光っていた杯の姿は消えていた。
代わりに、王子の背中には、いつぞやの夜に見かけた動物の羽…。
王子は名前を知らなかったが、蝙蝠の羽が生えていた。

王子は悦び、蝙蝠の羽を使って闇夜を飛んで行った。

翌朝、城の前で深手を負った王子が見つかった。
河を越えた王子は、隣国の兵に発見され、
不審者として襲撃されたのである。

王は蝙蝠の羽に気付かなかったが、
王子が外出癖が原因で負傷したことは察しがついた。

王は、王子が危険な隣国へ出向かないようにするため、
そして、誰とも知らぬ襲撃者から王子を護るために、
王子を監禁することに決めた。

王子を自身の部屋に閉じ込め、扉には番兵を付けた。
窓から出られることが無いように、鉄格子を付けた。
誰が見ても、王子の脱出は不可能だろう。

しかし、王子は諦めなかった。

時には番兵の隙を突き、
時には食事を持ってきた給仕を殴り倒して、
時には死を演じて、心配して駆けつけた家臣の傍らをすり抜けて
扉からの脱出を試みた。

しかし、その都度王子は押さえつけられ、部屋に戻された。
今や、多少騒いだところでは誰も反応してもらえない。

ある夜、王子が部屋で途方に暮れていると、
番兵の話し声が聞こえてきた。

「戦争は、隣国の負けで終わりそうだな」
「らしいな。戦争に負けたら、あの姫様はどうなるんだろうな」
「綺麗な姫様だからな、相手の国に取られちまうだろうさ」

それを聞いた王子は、何としてでもここを出ねばと、
力いっぱい、戸を殴りつけた。
しかし、それは番兵は驚かせこそしたものの、
状況の打開には至らなかった。

次に王子は、窓の鉄格子にしがみついた。
しかし、いくら力を込めようとも、鉄格子はびくともしない。
隙間から、どうにか出られないかと身体をねじ込むも、
頭を通すので精いっぱいだった。

あの夜に得た羽は、こんな事態になんの役にも立たない。
王子は、無力感と絶望に打ちひしがれた。

すると、王子の目の前には、あの夜にみた杯が浮かんで見えた。
「願いを叶えたく場、更なる代償を捧げよ。」
その言葉を聞いた王子の目つきが変わった。

王子は、壁に固定された装飾用の斧に目を付けた。
重すぎて、一人では持ち上がらないほどの斧だったが、なんとか引きずりおろす。

そして、王子は斧の刃に向けて、力の限り腕を振り下ろした。
想像を絶するほどの激痛と共に、王子の手首が落ちる。

しかし、王子は怯むことなく、さらに腕を、体を打ち付ける。
その都度飛び散る肉片は、それぞれが小さな蝙蝠となり、
鉄格子をすり抜けると城の外へと飛び立っていった。

次第に、肉片だけでなく王子の身体からも少しずつ蝙蝠が飛び立ち、窓を抜ける。
ついには、王子の前進が、蝙蝠の群れとして、鉄格子を潜り抜けた。

蝙蝠の群れとなった"王子"は、各々が赤く目を輝かせ、隣国へと向かった。
膨大な数の蝙蝠が群れが、天を泳ぐ大蛇のごとく、細く長く天を伸びていく。
夜空に輝く蝙蝠達の赤い眼光は、天に赤く光る河を描いていた。

その後、王子の姿を見た者はいない。
【編集後記】
Twitterでの「天の川」というリクエストに答えました。
天の川にカオス成分を組み込むため、目が光る蝙蝠の集団とすることは決めていましたが、蝙蝠の群れになる存在の設定に苦戦しました。

「河」…天の川ベースなので、男女の間に河を配置しました。最後に、天の川となった存在の対比になるかもと狙ってもいます。
「王子の外出癖」…端的に言えば、ストーカーです。王子が異常なまでに姫に会いたがる御ぜん立てとして配置しました。王子に対して姫が何を思っているか、そもそも存在に気付いているかは秘密。
「蝙蝠の羽」…最近よく使う、二段聖杯の一回目。とりあえず、変身の第一段階です。王子が監禁されるには、外出を咎められるかなにかの理由が必要と思いました。
「自室への監禁」…「愛する人に会うために自身を切り刻む」というコンセプトから始まり、最初に浮かんだのが某"魔女のゲーム"なので、脱出不可能な空間から出るために、穴を通れるように自身を刻む切っ掛けとしました。
「持てないほど重い斧」…一番悩み、未だに辻褄合わせができていないところ。原作ではニッパだが、腕を落とすほど景気よく行かないとカオス度が足りなそうに感じ、普通の斧では「それで鉄格子壊せばいいじゃん」になるので、設定を追加した。部屋に常備してもおかしくない理由に「装飾」と置いたが、なぜか刃挽きされていない不思議。

魔物のカテゴリは「色欲」。悪人に幽閉された男が愛する女性のために繰り広げる脱出劇のほうが爽快かもしれませんけど、ストーカーで、狂気の自傷をしている方がカオス度は高いのでしょうね。

魔物としては、ワイバーンと被るけど蝙蝠男が妥当かも。ただし、ワイバーンが格闘術や隠密に長けるのに対し、こちらは体の一部や全身を蝙蝠の集団に姿を変えます。ベルゼバブのイメージに近くなるのかな?
ある程度ダメージを与えると、ウロボロスのように天を舞い、空から黒い奔流が魔法使いを襲います。
蝙蝠達は王子が呼んでいるのではなく、あくまで体の一部が姿を変えた状態なので、呪部破壊で蝙蝠の総数は減少します。

供物を獲得できるとすれば、
投擲弾:「蝙蝠王子の手首」
土拳:「蝙蝠王子の足」


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posted by 蒼井夜空 at 06:46| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月21日

【ソルサク』創作文献『大きな古時計』

Twitterで募集したお題を元に作成しました。
お題依頼をした人は、感想コメントを残してもらえると嬉しいです。



『大きな古時計』

ある山村に、一人の男がいた。
男はウサギ商だった。

男にとって財産はふたつ。
ひとつは、男の商品であるウサギたち。
もうひとつは、大時計だ。

この大時計は、男が祖父から譲り受けた、唯一の形見である。
時折、故障して止まってしまうことがあるものの、
その都度修理し、大切に使い続けていた。

ある日、男のもとへ依頼が届いた。
ある貴族が旅行にで居る間、ウサギを預かってほしいそうだ。

そのウサギはとても珍しいウサギで、飼育がとても難しいという。
この依頼は、ウサギ商である男の腕を見込んでとのことだった。

男は依頼を引き受けると、飼育する上での注意を聞いた。
驚いたことに、このウサギは餌を与える時間が一度でも狂うと、
体を壊してしまうそうだ。

男は注意深く、貴族のウサギの世話をした。
貴族が指定した時間に餌をやり、
貴族が指定した時間に散歩をさせた。
指定の時間が近くなると、
時間になるまで大時計の前で待つこともあった。

ある朝、男は寝坊をした。

原因の一つは大時計が止まってしまい、音が鳴らなかったことだ。
しかし、それだけならば、さほど問題ではない

大時計が止まること自体はそこまで珍しくないし。
普段の男ならば、時計が無くとも時間通りに起床していた。

しかし、最近は貴族のウサギを世話するために疲労が溜まり、
その上で大時計が鳴らなかったために、寝坊したのだった。

男は大急ぎで貴族のウサギの様子を見に行ったが、
残念ながら貴族のウサギは死んでいた。


怒り狂う貴族に、男は謝り続けたが、貴族の怒りは収まらなかった。
なんと、貴族は男を処刑するようにと部下に言い放ったのである。

男は必死になって逃げ、どうにか追っ手を撒くことに成功した。
しかし、男の不幸はそれだけに留まらなかった。

疲れ切った体で我が家に戻った男が見たものは、
ウサギの死体であった。

貴族の報復だろう。ウサギは皆、深い傷を負って息絶えていた。

男にとって、ウサギたちは商品であると同時に、大切な家族だった。
多くの家族を一度に失った悲しみに、男は泣き崩れた。

どうしてこうなってしまったのだろう。
時計さえ壊れていなければよかったのだ
時計の故障に気付いていればよかったのだ。
そもそも、貴族の依頼を受けなければ。
許されるなら、あの日を初めからやり直したい。

すると、不思議な幻覚が見え始めた。

それは、光り輝く杯である。
盃から声が聞こえた。

願いを叶えたくば、代償を払え。

願いを叶えるという言葉を聞き、男は頷いた。

気が付くと、男は大時計の前にいた。
祖父の大時計は、今も時を刻んでいる。
時間は、貴族のウサギに餌を与えるべき時間の
少し前といったところか。

すると、男の目の前で、時計が止まった。
その時間は、貴族のウサギに餌を与えるべき時間の直前。

男は、急いで貴族のウサギの様子を見に行った。
驚いたことに、貴族のウサギは生きていた。

とりあえず、貴族のウサギに餌を与えると、
男は状況を見直すことにした。

自分は確かに、貴族のウサギを殺してしまったはずだ。
原因は、祖父の大時計が止まり、
餌を与えるべき時間に起きていなかったからだ。
そして、貴族の怒りを買った挙句、自分のウサギを殺された。

しかし、今はどうだ。
貴族のウサギは生きていた。
大時計が、自分の目の前で、"ウサギが死ぬ前に"止まるのを見た。
当然ながら、他のウサギたちにも問題は無い。

もしかして、時計が止まる直前の時間に戻るのだろうか。

男はひとつ確かめてみることにした。
男は大時計を留め、しばらく待ち、「時間を戻したい」と願った。
すると、大時計が光出して世界を覆う。
光が収まって見えたのは、
留める直前の時刻を示す、動いている大時計だった。

男の推測は当たっていたのである。

この力を有効に使う手は無いか。
そう思った男が考え出したのは賭け事だった。

男は朝起きるとウサギの世話をし、時計を留めると、
賭けをしに出かけるようになったのだ。

賭けに没頭したせいで、ウサギが死んだ日は、
時間を戻してほどほどの勝負で切り上げた。
気に入らない負け方をした日は、
時間を戻して勝負をやり直した。
賭けの末に喧嘩となった日は、
時間を戻して別の相手と勝負をいした。

ウサギ商という仕事の他に賭け事を覚えた男は、
その後も度々、貴族のウサギを死なせたが、
それでも時間遡行のおかげで仕切り直し、
ついには、貴族の依頼を終えることができた。

貴族のウサギという、一番の懸案事項が解決し、
肩の荷が下りた男は時間遡行を楽しもうと考えたが、
残念ながら、そううまく行かなかった。
何度も時間を戻したせいで、時間遡行に綻びが出始めたのである。

賭けに大敗した日に遡行すると、
賭けを始める前より持ち金が減っていた。

大怪我を負った日に遡行すると、
軽いながらも怪我が残ったままだった。

ウサギがキツネに襲われた日に遡行すると、
襲われる前から数が減っていた。

そしてついには、時間遡行そのものができなくなった。
止まる直前まで遡行を可能とする大時計。それが、完全に動かなくなったのだ。
いくら修理しても動かず、大時計が完全に動かなくなってからは
いくら願っても時間が戻ることはなかった。

男は、ひどく落胆しながらも、以前の生活に戻った。

ある激しい雨の夜。
男は村から離れた街にいた。

本来、ウサギの世話がある彼があまり遠出することは無いのだが、
この日は買い手からの要望もあり、しぶしぶ町へ足を運んだのだ。

男は窓の外を眺めながら、ウサギを心配した。
ウサギの世話は信頼できる者に頼んであり、
男のウサギは、手が掛からないように育てているため、心配はない。

そのはずなのだが、激しい雨を見ていると、
男の胸には言いようのない不安が募った。


翌朝、大急ぎで村に戻った男が高台から見たものは、水に沈んだ村だった。
川が氾濫したのだろう。家々は水に沈み、誰の物かも知れない家財が流れていた。

男が茫然としていると、一人の女が話しかけてきた。
その女は、旅人らしい。

話によると、彼女は昨晩からこの高台にいて、村が沈む瞬間を目撃したらしい。

山のほうから大量の水が押し寄せてきて、
村が沈むまではあっという間だったそうだ。
幸い、彼女は高台で休んでいたから助かったが、
村人は逃げる暇も無かったらしい。
そして、水が押し寄せたのは、
奇しくも男がウサギの安否を心配していた頃だった。

その話を聞き、男は崩れ落ちた。

氾濫することを知っていればウサギを残していかなかった。
村人に危険を知らせることだってできたはずだ。
それどころか、氾濫に対策をすることだってできた。
出来れば今すぐにでも時間を戻したかった。

しかし、時間遡行はできない。
男が乱用したせいで、使えなくなっているのだ。

こんなことになるならば、使用を控えるべきだった。
せめて、本当に変えたい事実を変える時に留めるべきだった。

男が後悔し、絶望していると幻覚が見え始めた。
あの時に見えた、白い杯である。

白い杯が、あの日に聞こえた声で語り掛けてきた。

願いを叶えたくば、代償を払え。

その声に対し、男は願った。
どんな代償を捧げても構わない。
川が氾濫する前に、このことをみんなに伝えたい。

すると、村の一角が光りだした。
そこは、男の家がある場所。
正確には、祖父の大時計がある場所だった。
その光は、村を包んでもなお収まらず、
男以外を光の世界に包み込んだ。


光が収まってしばらくの時が立ち、
その高台に一人の女がやってきた。
女は旅人である。

女が高台から村を見下ろすと、
川の周りが村の男たちが集まっていた。
どうやら、川岸に積み重ねた土嚢を処分しているらしい。
あの様子だと、昨晩の大雨でも大事はなかったようだ。

今夜はこの村の世話になろうか。

そうつぶやき、村へと降りて行った彼女を、
時計とウサギが混じり合った魔物が眺めていた。
【編集後記】
Twitterでのリクエストに答えました。
今回の文献には、以前から考えていた「時計ウサギ」の要素が入っています。当初は、「特定の時間を再現した並行世界へ飛ぶ」というシナリオを考えたのですが、結局こんな構成になりました。

「祖父の時計」…大きな古時計そのまま。「今はもう動かない」から、文献の途中で完全に壊れることは事前に決めていました。
「貴族のウサギ」…ウサギ商の男に、最初に「やり直したい」と思わせるために用意した、デリケート過ぎるウサギ。逆に、男のウサギは「手が掛からないウサギ」。私なら、どれだけ前者が珍しかろうと、飼うなら後者を選びます。
「賭け事」…「もしも時間を巻き戻せるなら」で、一番実用的なのはこのあたりだと思う。話の都合とはいえ、そのままギャンブラーにならず、すっぱりと諦めた男は尊敬に値すると思う。
「沈んだ村」…元となった光景は、雛○沢だったり、キ○の旅に登場する国だったり。男の村人に対する感情が描写されていないので、「村を戻したい」という動機で考えると強引な展開。
「時計とウサギが混じり合った魔物」…あの魔物はいったい。

魔物のカテゴリは「生欲」。

魔物としては、ウサギ耳の中年男とか、ハーメルン的なウサギ男とか。たぶんウサギを召喚する。
固有の能力として、危険を感じると短時間の時間遡行を行う。
例えば呪部破壊をすると、大時計を召喚して飛び込んで姿を消し、どこからともなく現れる。再度現れたとき、呪部は修復され、体力も多少回復しているが、遡行をするたびに呪部は脆くなり、回復量も減っていく。何度か遡行させると、遡行そのものができなくなる。

なかなか死んでくれないあたりは、フェニックスを彷彿とさせる。

供物を獲得できるとすれば、
結界:「時兎の長針」
複製:「時兎の長耳」ランダムに1個の供物の回数を回復する


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posted by 蒼井夜空 at 00:43| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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